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令和2年11月16日
「書きましょ」(書のワークショップ)
 

書道家・矢野きよ実さんご指導の下,「無敵プロジェクト」「かさおかブランド協議会」の皆様の力強いバックアップを受けて,11月16日(月)午前,「書きましょ」(書のワークショップ)が今井小学校で開催されました。参加者は5,6年生。約2時間半にわたって,子どもたちは書に没頭し,全員で1000枚以上(矢野さん談)の作品を書き上げました。
 
授業等で行う習字・書写とは異なり,お手本はありません。子どもたちの心の中にある言葉をそのまま書に表すという,これまでにない経験をしました。経験がないと言えば,写真でご覧になればわかるとおり,こんな大きな紙に筆で書いたことも初めてでしょう。でも,矢野さんが最初に筆の使い方をご指導くださった後は,全員が主体的にどんどん作品を作り続けました。選ぶ紙も小さなものから大きなものへと変わっていきました。平均すると1人40~50枚は書いたということです。全て,自分の心に浮かんだ言葉が題材の作品です。子どもたちも「はじめ,こんなに書けるようになるとは思っていなかった。」とつぶやいていました。見ている私たちも,子どもたちの没頭・変容していく様子,その一つ一つの作品のすばらしさに感動を覚えました。
 
矢野さんのご指導は,私たち学校教育に携わる者からも学ぶことばかりでした。書道家・書道のプロとしての技術はもちろん凄いのですが,そうではなく,子どもたちの指導の仕方に,私たちが学ぶべきところがたくさんありました。その中から2点,紹介します。
 
(1)ほめて伸ばすということ
上にも書きましたが,矢野さんは開始時の「筆の使い方」以外,特に子どもたちを指導されませんでした。終始,ほめること。これのみだったと言っても言い過ぎではありません。「ほめて伸ばす」ことが良いという考え方は,多くの人が持っているでしょう。でも,なかなかその姿勢を貫き通せるものではありません。矢野さんは,見事なまでに貫かれていました。プロフェッショナルだから,子どものがんばったこと・その作品の良さが的確にほめられるのです。具体的に,優しく,意欲を高めるようにほめてくださるので,子どもたちの作品作りに注ぐ熱量もどんどん高まります。子どもは上辺だけのほめ言葉であれば見透かします。矢野さんのほめ言葉に子どもたちは納得し,もっとほめてもらいたいと思い続けながら活動しました。
 
(2)子どもに選択させるということ
矢野さんが,開始時に子どもたちに「自己紹介」を求めた際,恥ずかしい等の理由ですぐに話せない子どもがいました。学校における日々の指導では「なんとか話をさせよう」として,いろんな言葉かけをして話すことを促すものです。でも矢野さんは,「後で話せるようになったら話してね。」と,決して無理強いされません。そして話せなかった子どもも,結局後からちゃんと話しました。作品作りにおいても,書にする文字は全て子どもの心の中にある言葉を自由に選んだものですし,筆選びも,用紙の大きさ選びも,全て子ども自身が決めて取り組みました。この「子どもに選択させる」という徹底したご姿勢に,私は舌を巻いたのでした。
 
近年,教育界で「学びのユニバーサルデザイン(Universal Design for Learning, UDL)」という考え方が注目されています。自分の学びを自分で舵とれる学習者を育てるための学習環境づくりの枠組みです。例えば,計算問題がとても苦手な子どもに対して,1から10まで計算の仕方を教えるのではなく,できるだけその子どもに選択肢を与えながら自ら学び方を選んで学習できるような環境を用意することを目指すという考え方です。子どもも,最終的には自立しなければなりません。学び方を自分で選択できるような学習を繰り返していれば,将来主体的に学べる人に成長していくという想定です。今,とても重要視されています。
 
たった2時間半という限られた時間ですから,しっかりとやり方を教えた後に作品作りをさせよう,という考え方もあるでしょう。でも矢野さんは,上記した「学びのユニバーサルデザイン」を彷彿するようなご姿勢で,子どもたち自身に選択させながら見事に導いてくださり,短時間で驚くような成果を上げてくださいました

今井小学校の子どもたちの書は,本当にすばらしいものでした。全て,矢野さんに引き出していただいた,子どもたちが持っている資質能力の賜物です。一方で,私たち今井小学校の教職員は,日々の授業において,どこまで子どもたちの持っている良さを引き出し,資質能力を伸ばしているのか。これまでやってきたことをさらに改善した取組が,まだまだできるのではないか。反省を込めた振り返りを促されました。矢野さんのご指導から学んだことを活かしていきたいと,強く思った2時間半でした。
 
なお,「無敵プロジェクト」「かさおかブランド協議会」の皆様の御尽力にも心より感謝しています。子どもたちが心の言葉を次々と書に表せるように,本当に迅速に,ていねいに,献身的に,そばへ付いて対応してくださいました。これなくして,今日の子どもたちの充実した学習はあり得ませんでした。子どもたちは,実に贅沢な時間を過ごすことができました。矢野きよ実さんをはじめとする,かかわってくださった全ての方々に,心より御礼申し上げます。
 
この「書きましょ」(書のワークショップ)は,石の島かさおかプロジェクト「シマヲカナデルー島を奏でる」のプレイベントです。本番の2月には,今井小学校の子どもたちの作品も展示されます。ぜひ,多くの方々に会場を訪ねていただければと思っています。